NURO光が速い理由:独自技術(G-PON)の仕組み解説

NURO光が速い理由:独自技術(G-PON)の仕組み解説

NURO光の驚異的な速度を支える技術

NURO光が提供する下り最大2Gbpsという、一般的な光回線サービスを凌駕する通信速度は、多くのユーザーにとって魅力的なポイントとなっています。この高速通信を実現しているのは、ソニーネットワークコミュニケーションズが独自に開発・採用している「G-PON」という通信技術です。本稿では、このG-PONの仕組みについて、わかりやすく解説していきます。

G-PONとは何か?

G-PONは、Gigabit Passive Optical Networkの略称です。名前の通り、ギガビットクラスの通信速度を、パッシブ(受動的)な光ファイバーネットワークで実現する技術を指します。ここでいう「パッシブ」とは、途中の分岐点に電気的な増幅器などを必要としない、ということです。光信号は、途中で減衰することなく、より遠くまで伝送されるため、設備投資を抑えつつ、広範囲に高速通信を提供することが可能になります。

従来の技術との比較:GE-PONとの違い

NURO光が採用しているG-PONは、同業他社でも採用されているGE-PON(Gigabit Ethernet Passive Optical Network)と比較されることがよくあります。両者ともギガビット級の通信速度を提供しますが、その仕組みにはいくつかの違いがあります。

GE-PONの仕組み

GE-PONは、基本的に1本の光ファイバーを複数のユーザーで共有する方式です。データは「時分割多重」という技術を用いて、各ユーザーに割り当てられた時間帯に送受信されます。この方式では、各ユーザーの通信が他のユーザーの通信に影響を与える可能性があり、理論上の最大速度は下り1Gbps、上り1Gbpsとされています。

G-PONの仕組み:TDMAとOFDMAの融合

一方、NURO光が採用するG-PONは、GE-PONの時分割多重に加え、「OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)」という通信技術を応用しています。OFDMAは、通信に利用できる周波数を細かく分割し、それぞれを異なるユーザーや異なるデータストリームに割り当てる技術です。これにより、複数のユーザーが同時に、かつ効率的に通信を行うことが可能になります。

G-PONの通信は、主に以下の2つの技術によって支えられています。

1. TDM/TDMA(時分割多重・時分割多元接続)

これは、GE-PONでも採用されている基本的な技術です。1本の光ファイバーを、時間的な区切りで複数のユーザーに共有させます。例えば、ある瞬間にAさんのデータが送られ、次の瞬間にはBさんのデータが送られる、といった具合です。これにより、物理的な回線を共有しつつ、各ユーザーに帯域を割り当てます。

2. WDM(波長分割多重)

G-PONの最大の特徴の一つが、このWDM技術の活用です。WDMは、異なる波長(色)の光信号を、1本の光ファイバーで同時に伝送できる技術です。NURO光では、下り通信と上り通信で異なる波長を使用することで、互いに干渉することなく、それぞれの通信を効率的に行うことができます。

さらに、G-PONは、GE-PONのTDMAに加えて、OFDMAの要素を取り入れることで、より高度な帯域制御と効率化を実現しています。

G-PONがもたらす速度向上

G-PONの採用により、NURO光は以下のようなメリットを享受しています。

下り最大2Gbpsの実現

G-PONは、理論上、GE-PONよりも高い通信速度を実現しやすい構造になっています。特に下り通信においては、OFDMA技術の恩恵を受け、効率的なデータ伝送が可能となり、下り最大2Gbpsという高速通信を実現しています。

上り通信の高速化

GE-PONの上り通信速度は下り通信速度と同等か、あるいはそれ以下であることが一般的です。しかし、G-PONでは、上り最大1Gbpsという、こちらも非常に高速な通信速度を提供しています。これは、大容量のデータをアップロードする際や、オンラインゲーム、ビデオ会議など、上り通信の重要性が増している現代において、大きなアドバンテージとなります。

遅延の低減

G-PONの効率的なデータ伝送方式は、通信の遅延(レイテンシ)を低減する効果もあります。これは、オンラインゲームでの快適なプレイや、リアルタイムでのコミュニケーションにおいて、非常に重要な要素となります。

伝送効率の向上

OFDMA技術の応用により、G-PONは利用可能な帯域をより細かく、かつ柔軟に割り当てることができます。これにより、通信トラフィックの状況に応じて、効率的に帯域を配分し、全体的な伝送効率を高めています。

NURO光のG-PON導入における工夫

NURO光がG-PONを最大限に活かすためには、単に技術を導入するだけでなく、それらを最適に運用するための工夫が不可欠です。

専用線に近い環境の提供

NURO光では、「ダークファイバー」と呼ばれる、NTT東西から借り受けた未使用の光ファイバーを自社で敷設し、G-PONの設備を構築しています。これにより、他社の光回線サービスと比較して、より安定した、占有に近い帯域での通信を提供することが可能になっています。

ONU(Optical Network Unit)の高性能化

G-PONの性能を最大限に引き出すためには、終端に設置されるONU(光回線終端装置)も高性能である必要があります。NURO光では、2Gbpsの通信速度に対応できる高性能なONUを提供しており、これにより、ユーザー宅内での高速通信を確実に実現しています。

まとめ

NURO光の圧倒的な速さは、「G-PON」という独自技術の採用によって実現されています。G-PONは、従来のGE-PONと比較して、WDM技術の活用やOFDMAの要素を取り入れた高度な通信方式により、下り最大2Gbps、上り最大1Gbpsという驚異的な速度と低遅延を実現しています。さらに、ダークファイバーの活用や高性能なONUの提供といった、インフラ面での投資も、NURO光の高速通信を支える重要な要素と言えるでしょう。これらの技術と工夫の組み合わせが、NURO光を「速い」光回線たらしめているのです。

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